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「取引先から『でんさいライト』での支払いを打診されたけれど、よくわからない」
「2026年に手形が廃止されると聞いたけど、何から始めればいいのだろう」
このようなお悩みをお持ちの中小企業経営者や経理担当者の方も多いのではないでしょうか。
紙の手形に代わる新しい決済手段として「でんさい」が登場し、さらに手軽な「でんさいライト」というサービスも始まりました。
しかし、2つのサービスの違いが分かりにくく、どちらが自社に合っているのか判断に迷いますよね。
この記事を読めば、「でんさい」と「でんさいライト」の具体的な違いから、あなたの会社に最適なサービスの選び方まで、初心者の方にも分かりやすく理解できます。
手形廃止という大きな変化の波に乗り遅れないためにも、ぜひ最後までご覧ください。
「でんさい」を理解するために、まずはその基本となる「電子記録債権」について確認しましょう。
電子記録債権とは、手形や売掛債権といった事業者の資金繰りに関する問題を解決するために作られた、新しいタイプの金銭債権です。
従来の手形取引には、以下のような課題がありました。
「でんさい」は、これらの課題を電子化によって解決する仕組みです。
手形が持つ機能を維持しつつ、安全性と効率性を大幅に向上させています。
「でんさい」について調べていると、似たような言葉を目にすることがあります。
ここで一度、それぞれの用語の違いを整理しておきましょう。
| 用語 | 概要 | 提供機関 |
|---|---|---|
| 電子記録債権 | 電子債権記録機関の記録原簿への電子記録を効力発生の要件とする金銭債権のこと。法律で定められた制度そのものを指します。 | – |
| でんさい | 株式会社全銀電子債権ネットワーク(通称:でんさいネット)が提供する電子記録債権サービスの商品名です。 | でんさいネット |
| 電手(でんて) | 三菱UFJ銀行が提供する電子記録債権サービスの商品名です。 | 三菱UFJ銀行 |
つまり、「電子記録債権」という大きな枠組みの中に、サービスとして「でんさい」や「電手」などが存在すると理解しておくと分かりやすいです。
この記事では、全国の多くの金融機関で利用できる「でんさい」について詳しく解説していきます。
「でんさい」には、以前から提供されているサービスと、新しく登場した「でんさいライト」の2種類があります。
どちらも電子記録債権を利用する点は同じですが、中小企業や個人事業主がより使いやすいように改良されたのが「でんさいライト」です。
2つのサービスの違いを、以下の比較表で見ていきましょう。
| 比較項目 | でんさい(従来のサービス) | でんさいライト |
|---|---|---|
| 1. インターネットバンキング(IB)契約 | 原則として必要 | 不要 |
| 2. 利用端末 | 主にPC(金融機関のIBサイト経由) | PC、スマートフォン、タブレット |
| 3. 利用画面 | 金融機関ごとに異なる | でんさいネットが提供する統一画面 |
| 4. 基本手数料(月額) | 有料の場合が多い(金融機関による) | 原則無料 |
| 5. 主な対象者 | 法人全般、個人事業主 | 中小企業、個人事業主 |
| 6. 機能 | 債権の発生・譲渡・割引など全機能 | 支払(発生記録)や受取が中心(一部機能制限の可能性あり) |
| 7. サービス開始時期 | 2013年2月 | 2024年11月より順次開始 |
最も大きな違いは、「でんさいライト」がインターネットバンキング契約不要で、月額基本手数料も無料である点です。
これにより、これまで導入のハードルが高かった小規模な事業者でも、手軽に電子債権を始められるようになりました。
また、スマホやタブレットから、どの金融機関でも同じ画面で操作できるため、場所を選ばず直感的に利用できるのも大きな魅力です。
2つのサービスの違いがわかったところで、「自社にはどちらが適しているのか」を考えてみましょう。
判断のポイントは、インターネットバンキングの利用状況や、取引の規模、コスト意識などです。
ここでは、具体的な事業タイプ別にどちらのサービスがおすすめかを解説します。
以下のような事業者の方には、「でんさいライト」が最適です。
「でんさいライト」は、初期投資やランニングコストをかけずに始められる点が最大のメリットです。
特に、個人事業主や設立間もないスタートアップ企業にとって、コストをかけずに業務を効率化できる強力なツールとなるでしょう。
一方で、以下のような事業者の方には、従来の「でんさい」が適しています。
すでにインターネットバンキングを使いこなしている場合、既存のプラットフォームからシームレスに「でんさい」を利用できる方が効率的かもしれません。
また、フル機能が使えるため、多様な資金調達や決済ニーズに柔軟に対応できるというメリットがあります。
ここまで読んで、「でんさいライト」に魅力を感じている方も多いのではないでしょうか。
導入を最終決定する前に、メリットとデメリットの両方をしっかりと把握しておくことが大切です。
客観的な視点でサービスを評価し、自社にとって本当に有益かどうかを見極めましょう。
「でんさいライト」を導入することで得られる主なメリットをまとめました。
| メリット | 具体的な効果 |
|---|---|
| コスト削減 | – 月額基本手数料が無料 – 手形発行にかかる印紙税が不要 – 手形の郵送費や人件費を削減 |
| 業務効率化 | – 手形の作成、押印、交付、保管といった事務作業が不要 – 支払期日に自動で入金されるため、取立手続きも不要 |
| 利便性の向上 | – スマートフォンやタブレットから、いつでもどこでも取引可能 – 金融機関を問わず統一された画面で操作が簡単 |
| 安全性の確保 | – 紛失、盗難、偽造のリスクがない – ペーパーレスなので災害時にも安心 |
これらのメリットは、日々の経理業務の負担を大幅に軽減し、より付加価値の高い業務に集中する時間とリソースを生み出します。
一方で、導入前には以下の点に注意が必要です。
| デメリット・注意点 | 対策・考え方 |
|---|---|
| 機能の制限 | 支払金額の上限設定など、一部機能が制限される可能性があります。 (詳細は利用する金融機関にご確認ください) |
| 取引先の協力 | 支払先・受取先の両方が「でんさい」または「でんさいライト」を利用している必要があります。 |
特に重要なのが、取引先の協力です。
自社だけが導入しても、取引相手が対応していなければ利用できません。
導入を検討する際は、事前に主要な取引先に「でんさいライト」での取引が可能か相談してみましょう。
その際は、「手数料が安くなる」「入金管理が楽になる」といった、相手側にとってもメリットがあることを伝えると、スムーズに話が進む可能性があります。[1]
「でんさいライト」を導入すると決めたら、具体的な手続きに進みましょう。
ここでは、申し込みから利用開始までの流れを3つのステップに分けて解説します。
まずは、自社が取引している金融機関が「でんさいライト」に対応しているかを確認します。
多くの都市銀行、地方銀行、信用金庫などで取り扱いが始まっています。
【主な取扱金融機関の例】
普段お付き合いのある金融機関のウェブサイトを確認するか、窓口に問い合わせてみましょう。
「でんさいライト 取扱金融機関」などのキーワードで検索するのも有効です。
取扱金融機関が見つかったら、利用申込の手続きを行います。
必要な書類や手続きの方法は金融機関によって異なりますが、一般的には以下の流れで進みます。
手続きで不明な点があれば、遠慮なく金融機関の担当者に質問しましょう。
審査が完了すると、利用者専用のIDや初期パスワードが通知されます。
通知された情報を使って「でんさいライト」の専用サイトにログインし、パスワードの変更などの初期設定を行えば、すぐに利用を開始できます。
操作は直感的で分かりやすいため、マニュアルを見ながら進めれば、専門的な知識がなくても問題なく設定できるでしょう。
この記事では、「でんさい」と「でんさいライト」の違いを中心に、サービスの選び方から導入手順までを解説しました。
| サービス | こんな事業者におすすめ! |
|---|---|
| でんさいライト | – コストと手軽さを最優先したい – IB契約がない、またはしたくない – スマホで経理を完結させたい |
| でんさい(従来型) | – IB契約をすでに利用している – 複雑な取引が多く、全機能を使いたい – 既存の業務フローとの連携を重視したい |
2026年には約束手形の利用が廃止される予定です。
この大きな変化に対応するためには、早めに準備を始めることが重要です。
「でんさいライト」の登場により、これまでハードルが高いと感じていた中小企業や個人事業主の方々も、本格的なDX(デジタルトランスフォーメーション)への第一歩を踏み出しやすくなりました。
経理業務を効率化して生まれた時間やコストを、Webサイトの改善や営業活動の強化など、事業をさらに成長させるための次なる一手へと繋げていきましょう。
まずは身近な取引金融機関に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。
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