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手形とでんさいの違いは?2026年手形廃止に向けたメリット・デメリットと移行手順を徹底解説

紙の手形と「でんさい(電子記録債権)」の違いは、物理的な管理が必要かどうかにあります。2026年度末の手形廃止目標に向け、移行は避けて通れません。コスト削減や業務効率化など、企業にとって多くの恩恵をもたらします。

この記事でわかること

  • ・でんさいと紙の手形の記録・法的位置づけ・業務フローの決定的な違い
  • ・2026年の手形・小切手廃止に向けた背景と最新スケジュール
  • ・導入で得られる3つのメリット(コスト削減・業務軽減・柔軟な資金調達)
  • ・普及を阻むデメリットや初期コスト、実務での注意点
  • ・導入後の会計処理(電子記録債務・電子記録債権の仕訳例)

でんさいは紙の手形を電子化した新しい決済手段で、2026年を目処に紙の手形・小切手の利用が実質的に困難になるため導入が急がれています。取引先もシステムに加入している必要がある点に注意が必要で、手形は印紙代がかかりますがでんさいは非課税というコスト面での違いもあります。

経理担当として月末になると金庫から束になった手形を取り出して確認する作業は、多くの企業で担当者に大きな負担をかけてきました。
2026年に向けて手形が実質廃止されるという情報は、こうした業務からの解放を意味する大きな転換点でもあります。
新しい仕組みへの移行は面倒に感じるかもしれませんが、自社の決済業務を見直し、効率化する絶好のチャンスでもあります。
手形とでんさいの具体的な違いを正しく理解し、自社に最適な移行計画を立てていきましょう。

でんさい(電子記録債権)と紙の手形の決定的な違いとは?

手形とでんさいの違いは、ずばり「紙かデータか」という点に尽きます。記録や管理の方法が大きく変わります。それに伴い、法律上の取り扱いや実務のフローも全く異なるものになります。

両者の違いは物理的な紙からインターネット上のデータ管理へ移行する点で、でんさいは電子債権記録機関のシステム上で処理されるためです。手形法ではなく電子記録債権法という別の法律が適用され、手形のように金庫で物理的に保管する業務は発生しません。

ここでは、両者の基本的な違いを項目ごとに詳しく見ていきましょう。
全体像を把握することで、その後の細かいメリットやデメリットが理解しやすくなります。

記録・管理方法と法的位置づけの違い

手形は「手形法」に基づく有価証券であり、紙として存在します。一方のでんさいは「電子記録債権法」に基づくデータ上の金銭債権です。物理的な管理が不要になるのが最大の特徴です。

でんさいは電子債権記録機関の原簿に記録されるデータで、ペーパーレス化と決済インフラの近代化を目的として設計されています。手形のような記載不備による無効化リスクが激減する一方、紙ではないため手渡しや郵送でのやり取りはできません。

手形に記載する日付や金額を誤ってしまうと、取引先へ再発行を依頼する必要が生じるトラブルにつながります。
手形は記載事項に少しでも不備があると無効になってしまうという、非常にデリケートな性質を持っています。
でんさいはシステム上で必須項目を入力するため、そういった初歩的なミスが起こりにくい仕組みになっています。

比較項目 紙の手形 でんさい(電子記録債権)
実体 紙媒体(有価証券) 電子データ(金銭債権)
管理方法 金庫などで物理的に保管 システム上の記録原簿で管理
適用される法律 手形法・小切手法 電子記録債権法
紛失リスク あり(再発行手続きが非常に煩雑) なし(データのため物理的な紛失はない)
記載不備のリスク あり(要件を満たさないと無効) 極めて低い(システム入力で制御)

発生・譲渡(裏書)・決済(取立)のフロー比較

手形業務で発生していた「振出」「裏書」「取立」といった手作業は、すべてパソコン上の操作に置き換わります。特に決済日には自動で入金されるため、金融機関へ足を運ぶ必要がなくなります。

一連の業務がオンライン上で完結し自動化される点が大きな特徴で、銀行のシステムと連携し期日に自動送金される仕組みだからです。操作を覚えるまでは経理担当者の学習期間が必要ですが、取立依頼書の作成や銀行窓口での手続きが不要になります。

月末の忙しい時期に大量の手形を銀行の窓口へ持ち込む作業は、経理現場に大きな負担を強いてきました。
雨の日に手形を濡らさないように運搬する必要もあり、物理的な管理にはリスクとストレスが伴います。
でんさいなら、パソコンを開くだけで発生記録(振出)ができ、期日になれば自動的に口座へ入金される仕組みです。

業務プロセス 手形のフロー でんさいのフロー
発生(振出) 専用の用紙に金額などを手書き・押印し、郵送や手渡しで交付 PCから金融機関のシステム経由で「発生記録請求」を行う
譲渡(裏書) 裏面に署名・捺印し、相手に手渡しや郵送で渡す(廻し手形) PCからシステム上で「譲渡記録請求」を行う
決済(取立) 期日前に銀行窓口へ持ち込み、取立依頼の手続きをする 期日当日に自動で口座間送金が行われ、手続は一切不要
分割利用 原則として不可能(全額を譲渡する必要がある) 可能(必要な金額だけを指定して分割譲渡・割引できる)

コスト面(印紙税・手数料)の違い一覧

でんさい最大の魅力の一つが、コスト構造の変化です。印紙税が非課税になる影響は絶大です。一方で、システム利用料などが新たに発生します。

印紙代と郵送費がなくなり、代わりにシステム手数料がかかる形となり、でんさいは紙の文書ではないため印紙税法の課税対象外となるからです。導入する銀行によっては初期の登録料や月額基本料がかかる場合があり、取引件数が極端に少ない場合はコスト削減効果が薄くなります。

毎月数万円単位の収入印紙を購入している企業は少なくありません。
高額な印紙を金庫に保管する管理コストや、貼り間違いによるロスも実務上の負担となっていました。
でんさいに切り替えることで印紙代がゼロになるため、経営層への稟議も通しやすいと言えます。

コスト項目 紙の手形 でんさい(電子記録債権)
印紙税 課税対象(額面に応じて200円〜数万円が必要) 非課税(完全無料)
郵送費・配達証明 1通あたり数百円(書留など) 不要
取立手数料 銀行により1枚数百円〜1,000円程度 取引1件あたり数百円程度(銀行による)
保管・管理コスト 金庫設備費、盗難保険、台帳管理の人件費など 不要(データ管理のため)
システム利用料 不要 月額数千円〜(契約する金融機関による)

なぜ今「でんさい」への移行が必要なのか?手形廃止の背景

政府や金融機関が主導し、手形の利用を終わらせる動きが本格化しているためです。企業は強制的に決済手段の見直しを迫られています。

社会全体で手形から電子決済への移行が進められており、手形業務の負担軽減と経済全体の生産性向上が目的となっています。期限が迫ってから焦って対応すると業務に支障が出るため注意が必要で、法律で完全に禁止されるわけではありませんが実務上使えなくなります。

「うちは長年手形でやってきたから、今のままでいい」と考えている経営者の方も多いかもしれません。
しかし、世の中のルールが根底から変わろうとしています。
なぜこれほどまでに移行が急がれているのか、その背景を確認しておきましょう。

2026年の手形・小切手全面廃止目標(2026年問題)とは

政府は2026年度末までに、手形や小切手の利用をなくすという明確な目標を掲げています。これに合わせ、全国の銀行も手形帳の発行を停止するスケジュールを発表しています。

2027年春頃には手形を使った決済が事実上できなくなり、全国銀行協会が電子交換所の廃止などの方針を固めているためです。2026年9月末など金融機関ごとに手形振出の最終期限が設定されており、すでにすべて振込決済に切り替えている企業には影響ありません。

ニュースで「2026年問題」という言葉を聞いて、焦りを感じている担当者も多いはずです。
「急に言われても困る」と感じる声も少なくありません。
しかし、メガバンクをはじめとする金融機関がすでに手形帳の新規発行を停止し始めており、待ったなしの状況です。

予定時期 手形廃止に向けた主な動きとスケジュール
2021年6月 政府の「成長戦略実行計画」にて、2026年度末の手形・小切手廃止目標が閣議決定
2022年11月 全国の手形交換所が統合され「電子交換所」の運用が開始
〜2026年中 各金融機関が手形帳・小切手帳の新規発行を順次停止(メガバンクは2026年9月等を期限に設定)
2027年3月末 政府目標である「手形・小切手の交換枚数ゼロ」の達成期限
2027年4月以降 電子交換所の取り扱いが終了し、事実上手形決済が不可能になる見込み

下請法・取適法の改正による影響

法律の面からも、手形決済を制限する動きが強化されています。特に下請企業を守るための法改正が、電子化の大きな後押しとなっています。

発注側から受注側への手形による支払いが原則として禁止される方向にあり、下請企業の資金繰りを改善し現金化までの期間を短縮することが狙いです。でんさいであっても支払期日が長すぎるものは指導の対象になり、すべての取引ではなく委託事業者と中小受託事業者の関係に適用されます。

下請けの立場で仕事をしていると、支払いが数ヶ月先の手形で渡され、資金繰りに苦労する企業も多く存在します。
国もその問題を重く見ており、現金や電子決済ですぐに資金化できる環境を整備しようとしています。

法改正の関連事項 具体的な内容と影響
中小受託取引適正化法(取適法) 2026年1月施行。委託事業者から中小受託事業者への手形払いが原則禁止される。
現金化のスピード要求 電子記録債権であっても、期日までに現金を受け取ることが困難な支払いは禁止対象となる。
支払期日の短縮義務 物品等の受領日から60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を設定することが義務付けられる。
行政による指導 手形を使い続けたり、期日が長すぎたりする場合、公正取引委員会などからの指導が入るリスクがある。

でんさい(電子記録債権)を導入する3つのメリット

でんさいの導入は、単なる手形の代替にとどまりません。コスト、業務負担、資金調達の3つの面で、企業に大きなプラスの変化をもたらします。

会社のお金と時間の大幅な節約につながり、資金繰りも楽になる点が最大の魅力で、デジタル化によって物理的な制約や手数料が排除されるためです。メリットを最大化するにはある程度の取引件数があることが望ましく、元々手形取引が全くない企業には新たなメリットは発生しません。

経理の現場で特に「助かる」と感じられるのは、事務作業の劇的な減少です。
具体的にどれくらい楽になるのか、コスト面や資金面も含めて解説します。

1. 印紙税や取立手数料などのコスト削減

印紙税が非課税になるメリットは、取引金額が大きい企業ほど絶大です。郵送代や書留の費用もバカになりません。

手形にかかっていた直接的・間接的なコストを大幅にカットでき、データ通信で完結するため物理的な税金や輸送費がかからないからです。導入する銀行によってシステム利用料や月額費用が異なるため注意が必要で、振込決済と比較すると手数料が安く済むケースもあります。

毎月数万円の印紙代を払っていた企業なら、年間で数十万円の利益が手元に残ることになります。
チリも積もれば山となる、という言葉がぴったり当てはまる領域です。

費用項目(月間想定) 紙の手形でかかるコスト例 でんさいでかかるコスト例
印紙税(1枚4千円×10枚) 40,000円 0円(完全非課税)
郵送費(書留400円×10件) 4,000円 0円
取立手数料(800円×10件) 8,000円 4,000円(※システム手数料として)
月額基本料 0円 3,000円(※銀行による)
月間コスト合計(概算) 52,000円 7,000円(約4万5千円の削減!)

2. 紛失・盗難リスクの低減と事務負担の軽減

手形を紛失した際のリスクや、期日を管理する手間から完全に解放されます。経理担当者の精神的な負担も大きく減ります。

安全性が高まり、手作業によるミスや時間が削減される点が大きな利点で、システムが自動で記録・決済を行い物理的な実体がないためです。パスワード管理などシステム上のセキュリティ対策は必要で、支払先が倒産した場合の貸倒れリスク自体はでんさいでも消えません。

手形の入ったカバンを持ち歩く際の紛失・盗難のリスクは、経理担当者にとって大きなプレッシャーとなっていました。
盗難や紛失のプレッシャーがなくなるだけでも、日々の業務負担は大きく軽減されます。

業務・リスク比較 紙の手形運用 でんさいの運用
発行作業の負担 金額や日付を手書きし、社印を押して郵送する手間がかかる PCで必要な情報を入力し、承認ボタンを押すだけで完了
期日の管理 カレンダーや台帳に手書きで記入し、目視で期日をチェック システムが自動管理し、期日に自動で口座送金される
紛失・盗難リスク 常にあり。紛失時は裁判所の手続きなど数ヶ月がかりの対応が必要 物理的な紛失・盗難は100%発生しない
偽造のリスク 精巧な偽造手形をつかまされるリスクがゼロではない 電子認証により厳格に守られており、偽造は極めて困難

3. 分割譲渡・分割割引による柔軟な資金調達

でんさいは、債権を必要な金額だけ切り分けて使うことができます。これは紙の手形では絶対にできなかった革命的な機能です。

欲しい金額だけを割引(現金化)したり下請けに譲渡したりできる点が大きな強みで、データ上で金額を自由に分割できる仕組みになっているためです。分割譲渡の際にもシステム手数料が数百円程度発生し、手形は額面全額を一度に割り引くか譲渡するしかありませんでした。

「1000万円の手形を持っているけど、今月の資金繰りで必要なのは300万円だけ」というケースはよくあります。
手形では全額を割り引いて高い手数料を払うしかありませんでした。
でんさいなら、必要な300万円分だけを割り引いて現金化し、残りは期日まで持っておくという賢い使い方ができます。

資金調達の比較 手形割引の場合 でんさい割引(分割利用)の場合
割引の対象金額 額面の全額(分割は不可) 必要な金額だけを自由に指定可能
割引手数料の負担 全額に対して手数料がかかるため割高になりがち 割り引いた金額分のみに手数料がかかるため経済的
下請けへの譲渡 全額を譲渡する(廻し手形)ことしかできない 複数の下請け企業に対し、1万円単位などで分割して譲渡可能
手続きのスピード 銀行窓口へ持ち込んで審査を受けるため日数がかかる オンラインで手続きが完結し、審査も迅速(即日〜数日)

でんさい(電子記録債権)のデメリットと普及が進まない理由

メリットだらけに見えるでんさいですが、現在も企業の約1割程度しか利用していません。そこには、乗り越えるべき現実的な壁が存在します。

取引先の協力や初期の導入コストがハードルとなっており、双方のシステム対応が必要な独自のインフラであるためです。無理に全取引先を一斉に移行しようとすると頓挫しやすく、すでに取引先の大半がでんさいを導入済みの場合はスムーズに進みます。

「うちだけ導入しても、相手が使ってくれないと意味がない」
これが、多くの経営者が二の足を踏む最大の理由です。
課題を正しく把握し、どう対策するかを考えていきましょう。

1. 取引先も「でんさいネット」等への加入が必要

でんさいは、支払う側と受け取る側の両方がシステムに登録していないと取引が成立しません。相手に加入を促す手間が発生します。

取引先への説明と協力のお願いが不可欠で、閉じたネットワーク(でんさいネットなど)の中で債権を移動させる仕組みだからです。相手がITツールに不慣れな場合は導入を拒否されることもあり、振込であれば相手の口座番号さえわかれば一方的に支払いが可能である点とは対照的です。

長年付き合いのある年配の経営者に「今度からパソコンで手続きしてください」とお願いするのは、心理的なハードルが高い作業です。
「面倒くさい」と渋られるケースも実際には多く見られます。
実務上は、対応してくれる会社から少しずつ切り替えていくのが現実的です。

取引先の状況 企業がとるべき現実的な対応策(ハイブリッド運用)
でんさいを導入済みの取引先 速やかにでんさい決済へ移行し、双方のコスト削減メリットを享受する。
ITに明るく導入意欲がある取引先 でんさいのメリット(印紙代ゼロなど)を説明し、加入を積極的に促す。
導入を渋る・IT対応が難しい取引先 当面は従来通りの手形決済、または銀行振込(振込手数料の負担協議を含む)を継続する。
新規の取引先 契約時に、決済手段としてでんさいを基本とすることをあらかじめ合意しておく。

2. システム利用料や初期導入コストの発生

印紙代がなくなる代わりに、銀行へ支払う固定費や手数料が発生します。取引規模によっては、コスト増になるケースもあります。

自社の取引件数とコストを見極める必要があり、金融機関が提供するシステムを利用するための対価だからです。銀行によって料金体系が大きく異なるため複数行の比較が必須で、手形の発行枚数が多い企業はすぐに元が取れます。

「導入するだけでお金がかかるのか」と驚くケースもあります。
月に数枚しか手形を発行しない企業だと、月額基本料を払うだけで赤字になってしまうこともあります。
事前にしっかり試算してシミュレーションすることが大切です。

コストの種類 金額の目安(※金融機関により大きく異なります) 備考
初期契約料・登録料 無料 〜 30,000円程度 導入時のみ発生。キャンペーンで無料の銀行も多い。
月額基本料金 無料 〜 5,000円程度 毎月固定で発生。利用がない月でもかかる場合がある。
発生記録手数料(振出) 300円 〜 800円程度 / 1件 支払いを行うたびに発生。
譲渡記録手数料(裏書) 300円 〜 600円程度 / 1件 債権を他社へ譲渡する際に発生。
残高証明書発行手数料 1,000円 〜 2,000円程度 / 1通 決算時などに残高証明が必要な場合に発生。

3. 経理業務・会計処理の変更が必要

これまでの手形用の業務フローや、会計ソフトの設定を変更しなければなりません。新しいことを覚える心理的負担があります。

経理担当者への教育と社内ルールの再構築が必要で、新しい勘定科目を使用しシステム上での承認フローが変わるためです。導入直後は操作ミスが起こりやすいためダブルチェック体制を敷くのが無難で、最新のクラウド会計ソフトを使っていればデータ連携で自動化しやすくなります。

新しい勘定科目を設定する際は「これで合っているのか」と不安になる場面もあります。
しかし、一度ルールを決めてしまえば、あとは毎月同じ作業の繰り返しです。
最初の1ヶ月だけ乗り越えれば、あとは劇的に業務が楽になります。

業務項目 従来の手形業務フロー でんさい導入後の新しいフロー
社内の承認作業 紙の稟議書を作成し、手形に社長の実印をもらって回る システム上で担当者が入力し、責任者がクリックで承認
使用する勘定科目 「支払手形」「受取手形」 「電子記録債務」「電子記録債権」に設定を変更
会計ソフトの入力 手形の控えを見ながら、手作業で1件ずつ仕訳を入力 銀行データと連携し、仕訳を自動で取り込む(対応ソフトの場合)
期日の消込作業 銀行の通帳を見て、手作業で手形台帳を消し込む 期日に入出金データが連携され、自動で消込が完了する

【実務編】でんさい導入後の仕訳・会計処理の流れ

実際にでんさいを導入したあと、経理処理はどう変わるのでしょうか。基本的には勘定科目の名前が変わるだけなので、難しく考える必要はありません。

「電子記録債務」と「電子記録債権」という科目を使うことになり、手形とは法的な扱いが異なるため会計上も区別して記録する必要があるためです。既存の「支払手形」などに混ぜて処理しないよう注意が必要で、会計ソフトによってはあらかじめ科目が用意されている場合もあります。

初めてこの科目名を見ると難しく感じるかもしれませんが、使い方は従来の手形と全く同じです。
実務でそのまま使える仕訳の例を、支払側と受取側に分けて紹介します。

支払企業(債務者)の仕訳例(買掛金から電子記録債務へ)

仕入代金(買掛金)をでんさいで支払う場合、勘定科目は「支払手形」の代わりに「電子記録債務」を使用します。決済日には自動で当座預金などから引き落とされます。

発生時は「電子記録債務」を貸方に、決済時は借方に記帳することになり、債務(払う義務)が発生し期日に預金から減少するためです。手数料が発生した場合は支払手数料として計上し、ファクタリングを利用した場合は別の処理になります。

仕入先に対して、システム上で「発生記録請求」を行った時点と、実際の期日になった時点の2回仕訳を行います。

取引のタイミング 借方(金額) 貸方(金額) 摘要・解説
① でんさいを発生させた時
(例:買掛金100万円を支払う)
買掛金(1,000,000) 電子記録債務(1,000,000) 従来「支払手形」としていた部分を「電子記録債務」に変更します。
(手数料がかかった場合) 支払手数料(500) 現金・預金(500) 発生記録にかかったシステム手数料を計上します。
② 決済期日になった時
(例:口座から引き落とされた)
電子記録債務(1,000,000) 当座預金(1,000,000) 期日に自動で引き落とされ、債務が消滅します。

受取企業(債権者)の仕訳例(売掛金から電子記録債権へ)

売上代金(売掛金)をでんさいで受け取った場合、勘定科目は「受取手形」の代わりに「電子記録債権」を使用します。期日になると自動で口座に入金されます。

発生時は「電子記録債権」を借方に、決済時は貸方に記帳する形となり、債権(もらう権利)が発生し期日に現金化されるためです。譲渡や割引を行った場合はさらに別の仕訳が必要になり、取立のための手数料は手形取立費ではなく支払手数料等で処理します。

取引先から「でんさいで支払いました」と連絡(通知)が来たタイミングで仕訳を起こします。手形を受け取った時と同じ感覚です。

取引のタイミング 借方(金額) 貸方(金額) 摘要・解説
① でんさいを受け取った時
(例:売掛金100万円を受け取る)
電子記録債権(1,000,000) 売掛金(1,000,000) 従来「受取手形」としていた部分を「電子記録債権」に変更します。
② 決済期日になった時
(例:口座に入金された)
普通預金(1,000,000) 電子記録債権(1,000,000) 期日に自動で入金され、債権が消滅します。取立手続きは不要です。
③ 割引を行った場合
(※期日前に現金化した場合)
当座預金(980,000)
手形売却損(20,000)
電子記録債権(1,000,000) 割引料を引かれた金額が入金されます。勘定科目は電子記録債権売却損などを使う場合もあります。

手形廃止後の資金調達:でんさいとファクタリングの比較

手形がなくなると、手形割引という資金調達手段が使えなくなります。その代わりとなるのが「でんさい割引」と「ファクタリング」です。状況に合わせて使い分けることが重要です。

でんさい割引は手数料が安く、ファクタリングは審査が早い傾向にあり、対象となる債権の性質や金融機関の審査基準が異なるためです。でんさい割引は相手が倒産した場合に買い戻す義務(遡及義務)がある点に注意が必要で、自社に売掛金やでんさいの残高がない場合は利用できません。

「手形割引ができなくなったら、急な資金繰りはどうすればいいのか」と不安に思う経営者も多いはずです。
でんさいが普及するまでは、売掛金をそのまま売却する「ファクタリング」が非常に強力な選択肢となります。
でんさい未対応の取引先の売掛金をファクタリングで現金化し、資金繰りのピンチをしのぐ活用事例も多く見られます。

比較項目 でんさい割引 ファクタリング 手形割引(参考)
対象となる債権 電子記録債権(でんさい) 一般的な売掛債権(請求書など) 受取手形
資金化のスピード オンラインで即日〜数日 即日〜数日(審査が柔軟な会社が多い) 銀行持ち込み後、数日〜1週間程度
手数料・金利の目安 年利1%〜10%程度(比較的安い) 売掛金の1%〜20%程度(審査状況による) 年利2%〜15%程度
償還請求権(買戻し義務) あり(相手が不渡りを出したら自社が払う) 原則なし(相手が倒産しても自社に支払い義務はない) あり(不渡りの際は買い戻す義務あり)
取引先への通知 記録原簿に残るため通知される 2社間ファクタリングなら通知不要(内緒でできる) 裏書されるため履歴が残る
おすすめの利用シーン でんさい取引が多く、少しでも安く資金調達したい場合 でんさい未対応の取引先が多く、倒産リスクも避けたい場合 (今後利用できなくなる見込み)

まとめ:自社に合った決済手段を選び、スムーズな移行計画を

でんさいは、経理の現場を紙の束から解放し、コストを劇的に下げる可能性を秘めた素晴らしい仕組みです。2026年の手形廃止に向けて、今すぐ行動を起こす必要があります。

メリットとデメリットを比較し計画的にでんさいへ移行することが重要で、直前になって焦ると取引先への対応や社内整備が間に合わなくなるためです。全取引先の一斉移行は難しいため段階的なアプローチが必要で、無理に全件をでんさいにせず銀行振込と併用しても構いません。

長年染み付いた手形の習慣を変えるのは、少し勇気がいることです。
しかし、月末の手形管理から解放されるメリットを考えれば、システム切り替えは十分な価値のある投資と言えます。
焦る必要はありませんが、立ち止まっている時間もありません。まずは社内の手形発行枚数とコストを洗い出し、取引先に相談を持ちかけるところから始めてみてください。

移行に向けたステップ 具体的なアクションプラン
ステップ1:現状把握 毎月の手形振出・受取枚数、印紙代、郵送費などのコストを計算する。
ステップ2:銀行の比較 取引のある複数行の「でんさい」システム利用料や手数料を比較・検討する。
ステップ3:取引先への案内 手形取引先へ、2026年問題の背景とともに「でんさい移行」の打診を行う。
ステップ4:社内テスト 同意を得られた取引先数社と、少額の決済でテスト運用(ハイブリッド運用)を開始する。
ステップ5:本格移行 会計ソフトの設定を変更し、徐々にでんさいの比率を増やしていく。

この記事を書いた人

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中屋 弥

職業:WEBコンサルティング会社代表兼最高財務責任者

トヨタ東京カローラ株式会社、株式会社GMOインターネット、その他ITベンチャーにおいて取締役兼財務管理担当などを経て、WEBコンサルティング会社を経営。
現在は経営の傍ら、金融系コラムを寄稿する事を主として活動。

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