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「売掛債権」と「でんさい」の違いとは?図解でわかる基礎知識と資金繰り改善のヒント

目次

最近、取引先から「今後の支払いを『でんさい』に切り替えたい」と打診され、戸惑っている経理担当の方も多いのではないでしょうか。
初めてこの言葉を聞いた際に、「また新しいシステムを覚えるのか」と戸惑うケースは少なくありません。
しかし、2026年度末の手形交換廃止や下請法規制の強化を背景に、決済手段のデジタル化は避けられない波となっています。
本記事では、専門用語を極力省き、売掛債権とでんさいの違いや自社に最適な手段を選ぶための判断軸を分かりやすく解説します。

この記事でわかること

  • ・売掛債権とでんさい(電子記録債権)の関係と決定的な違い
  • ・受け取る側・支払う側それぞれのでんさい導入メリット
  • ・導入前に知っておきたいデメリットと2026年問題の背景
  • ・でんさい割引とファクタリングの手数料・リスク比較
  • ・自社に最適な手段の選び方と取引先への交渉術

そもそも「売掛債権」と「でんさい」の関係と違いは?

「でんさい」は全く新しい借金や取引ではなく、あくまで「売掛債権」の一種です。
売掛債権という大きな枠組みの中に、でんさいが含まれているとイメージしてください。
ここでは、それぞれの言葉の定義と関係性を紐解いていきます。

でんさいは従来からある売掛債権を電子化したもので、手形などの紙ベースの取引の非効率性を解消するために作られました。全く異なる概念ではなく親子関係のような位置づけとなっており、現金取引や前払い取引は売掛債権に含まれません。

項目 関係性のイメージ
大分類 売掛債権(将来お金を受け取る権利)
中分類 売掛金、受取手形、電子記録債権(でんさい)

売掛債権とは「商品代金を受け取る権利」の総称

売掛債権とは、商品やサービスを提供した後に、将来その代金を受け取る権利のことです。
企業間の取引では、その都度現金で支払うのではなく、月末などにまとめて請求する信用取引が一般的です。
この「後でお金をもらう約束」のすべてを売掛債権と呼びます。
主に3つの種類が存在します。

売掛債権は掛取引で発生する権利全般を指す言葉で、ビジネスにおいて都度現金をやり取りするのは非効率だからこそ広く用いられています。請求書ベースのものだけでなく手形なども含まれ、クレジットカード決済などは別の債権として扱われます。

売掛債権の種類 主な特徴
売掛金 請求書ベースで後日振り込まれる最も一般的な権利
受取手形 支払期日が書かれた紙の証書を受け取る権利
電子記録債権 電子データとして記録・管理される権利(でんさい含む)

でんさい(電子記録債権)とは売掛債権を電子化したもの

でんさいとは、2008年に施行された法律に基づいて誕生した「電子記録債権」の一種です。
株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)という機関が、取引の記録を一元管理しています。
昔ながらの紙の手形が抱えていた、紛失や管理の手間といった不便さを解消するために作られました。
インターネットバンキングを通じて操作できるのが大きな特徴です。

でんさいは手形や売掛金の弱点を克服した電子的な金銭債権で、全国の銀行が参加するネットワークで安全に管理されています。利用するには専用のシステム登録が必要となり、すべての電子記録債権が「でんさい」というわけではなく、でんさいネットが扱うものを指します。

でんさいの基本情報 詳細
運営機関 株式会社全銀電子債権ネットワーク
目的 中小企業の資金調達の円滑化と業務効率化
操作方法 各金融機関のインターネットバンキング等

通常の「売掛金」や紙の「手形」との決定的な違い

最大の決定的違いは、すべてが「電子データ」として安全に管理されている点です。
請求書を送るだけの売掛金は手軽ですが、第三者への譲渡が難しく、資金化しにくい側面があります。
一方、紙の手形は譲渡しやすいものの、物理的な紛失リスクや管理の手間がつきまといます。
でんさいは、両者のメリットを掛け合わせ、デメリットをなくした仕組みなのです。

でんさいは売掛金の手軽さと手形の資金化のしやすさを併せ持っており、電子データで管理されるため物理的な制約がないからです。紙の証書は一切発行されないため、インターネット環境がない企業は利用が困難となります。

比較項目 売掛金 紙の手形 でんさい
媒体 請求書など 紙の証書 電子データ
紛失リスク ほぼなし あり なし
譲渡・分割 難しい 譲渡は可、分割は不可 譲渡も分割も可能
資金化 ファクタリング等 手形割引 でんさい割引

取引先から打診されたら?でんさい導入のメリット

取引先から「でんさいで支払いたい」と言われた時、自社にどのような影響があるのか気になりますよね。
実は、代金を支払う側だけでなく、受け取る側にとっても多くのメリットが用意されています。
経理業務の負担がどのくらい減るのか、具体的な視点で見ていきましょう。

でんさいの導入は取引先だけでなく自社の業務改善にも繋がり、物理的な作業が減りオンラインで手続きが完結するからです。自社の経理フローを一部見直す必要があり、支払う側か受け取る側かで得られるメリットの種類が異なります。

メリットを受ける立場 主な恩恵
納入企業(受け取る側) リスク回避、取立業務の削減、資金調達の柔軟性
支払企業(支払う側) 事務作業の激減、コスト削減、印紙税の非課税

納入企業(代金を受け取る側)のメリット

自社が商品を提供し、代金を受け取る立場としてでんさいを導入する場合の恩恵を整理します。
これまでの手形管理で抱えていたストレスから解放される場面が多くあります。
安全性の向上と、手間の削減が大きな魅力です。

受け取る側は管理の安全性向上と業務負担の軽減が図れ、金庫での保管や銀行への持ち込みが不要になるからです。入金確認はWeb上で行う必要があり、元々すべて銀行振込で回収していた場合は業務量の変化は少なめとなります。

受け取る側のメリット一覧 解決される過去の悩み
物理的リスクの解消 金庫の鍵の管理や持ち出し時の不安
分割譲渡が可能 手形の一部の金額だけを支払いに回せない不便さ
取立手続きが不要 期日前に銀行の窓口へ行く手間

紛失や盗難のリスクがゼロになる

紙の手形で最も怖いのは、紛失や盗難、火災による消失です。
月末に集金した手形を金庫に入れるまで気が気でないという担当者の声も多く聞かれます。
でんさいはサーバー上で電子データとして厳重に管理されます。
そのため、物理的に失われるリスクが完全にゼロになります。

手形の保管に関する精神的・物理的な負担がなくなり、実体のある紙が存在しないためです。ログインIDやパスワードの厳重な管理は必要で、自社のシステムがサイバー攻撃を受けた場合のリスクは別途対策が必要となります。

リスク要因 紙の手形 でんさい
紛失・盗難 金庫での厳重保管が必要 発生しない
偽造・改ざん 目視での確認が必要 システム上で防止
災害時の消失 火災や水害で失う危険あり サーバー管理で安全

必要な金額だけ分割して譲渡・資金化できる

紙の手形では、「100万円の手形のうち、30万円だけ下請けに譲渡する」といった分割ができませんでした。
でんさいなら、必要な金額だけを自由に切り分けて譲渡することが可能です。
残りの70万円だけを期日まで保有したり、割引に出して現金化したりできます。
資金繰りの自由度が格段に上がる素晴らしい機能です。

必要な金額だけを細かく分けて活用でき、電子データであるため金額の分割処理が容易だからです。分割するたびに金融機関所定の手数料がかかる場合があり、少額の取引ばかりの場合は分割のメリットを感じにくいこともあります。

資金の活用方法 紙の手形 でんさい
全額の譲渡・割引 可能 可能
一部金額の分割 原則不可能 可能
資金繰りの柔軟性 低い 非常に高い

支払期日に自動入金され、取立の手間が省ける

これまでは、支払期日が近づくと銀行の窓口へ手形を取り立てに持ち込む必要がありました。
でんさいの場合、支払期日になると自社の銀行口座へ自動的に資金が振り込まれます。
窓口に並ぶ時間や、取立依頼書を書く手間が一切なくなります。
経理担当者にとって、業務改善効果を実感しやすいポイントです。

手形の取立業務が消滅し自動で入金される仕組みで、でんさいネットと金融機関のシステムが連動しているためです。期日当日に口座残高を確認する作業は必要で、売掛金の場合は振込手数料が引かれることがありますが、でんさいは契約次第で扱いが異なります。

回収業務のフロー 紙の手形 でんさい
期日前の準備 銀行窓口へ持ち込み、取立依頼書の記入 一切不要
期日当日の動き 銀行にて決済確認 自動で口座に入金
担当者の負担 極めて小

支払企業(代金を支払う側)のメリット

取引先がなぜ自社にでんさいへの切り替えをお願いしてくるのか、その背景を知ることも大切です。
代金を支払う企業にとっては、主にコストと事務作業の面で絶大なメリットがあります。
この背景を理解しておくと、今後の交渉もスムーズに進みます。

支払う側はコスト削減と事務の効率化を強烈に推進でき、紙を発行・郵送する物理的なコストが丸ごと消えるからです。導入には社内システムの改修費用がかかる場合があり、支払先が数件しかない小規模事業者の場合は恩恵が薄いこともあります。

支払う側のメリット一覧 削減できるもの
事務負担の大幅削減 手書き作業、封入作業、郵便局への持ち込み
直接的なコストダウン 印紙代、切手代、手形帳の発行費用

煩雑な手形発行の事務負担を大幅に削減

毎月末の手形発行業務は、金額の間違いが許されない非常に神経を使う作業です。
手書きで金額を埋め、会社の代表印を押し、封筒に入れて郵送手配をする流れが必要でした。
何十枚もの手形を発行して負担を感じるケースも多く見られます。
でんさいなら、パソコンから支払いデータをアップロードするだけで一瞬で完了します。

手作業での発行業務がなくなりパソコン操作で完結し、振込データのように一括で支払い処理ができるためです。データの入力ミスを防ぐためのダブルチェック体制は必要で、会計ソフトと連携できない場合は手入力の手間が残ります。

発行業務の比較 紙の手形 でんさい
作成方法 1枚ずつ手書き、または専用プリンター パソコンからデータ送信
押印作業 代表印を1枚ずつ押印 電子認証で完了
相手への送付 封入し、書留などで郵送 システム上で自動通知

印紙代や郵送料などのコストダウンに直結

紙の手形を発行する際、金額に応じた収入印紙を貼る必要があります。
でんさいは課税文書に該当しないため、この印紙税が一切かかりません。
また、書留などで送っていた郵送費用や、銀行から手形帳を買う代金も不要になります。
年間で見ると、数十万円単位のコスト削減に直結する企業も少なくありません。

印紙代や郵送料など目に見える経費が大幅に削減され、電子データは印紙税法の課税対象外となるためです。代わりに金融機関に対するでんさいのシステム利用料が発生し、少額の取引ばかりで元々印紙を貼っていなかった場合は削減効果が限定的となります。

コスト項目 紙の手形(100万円発行時) でんさい
収入印紙代 200円(金額による) 0円(非課税)
郵送費 約400円(簡易書留) 0円
手形帳代 数千円(冊子購入) 0円

導入前に知っておきたい!でんさいのデメリットと普及状況

便利なでんさいですが、すべてが完璧なわけではありません。
導入にあたってのハードルや、どうしても残ってしまう潜在的なリスクが存在します。
また、「そんなに便利なら、なぜもっと普及していないのか?」という疑問にお答えします。

利用開始のハードルがあり貸倒れリスクは完全には消えず、双方がシステムに対応する必要があり金融機関の審査があるためです。取引先に利用を強制することはできず、すでに全取引先がでんさいを導入済みの場合はハードルを感じません。

導入のハードル 具体的な内容
登録の必要性 自社と取引先の双方が利用者であること
審査の存在 銀行の審査を通過しないと利用できない
リスクの残存 貸倒れ時の返済義務(割引利用時)

双方の「でんさいネット」登録と厳しい審査が必要

でんさいを利用する最大の障壁は、自社だけでなく取引先も登録が必要な点です。
相手が「よくわからないから嫌だ」と言えば、その取引先との間では使えません。
また、登録時には銀行の審査があり、赤字続きなど財務状況が悪いと利用を断られるケースがあります。
申し込み時に必要な提出書類の多さが導入の障壁となるケースも見られます。

利用には双方の合意と銀行の審査通過が絶対条件で、信用取引の安全性を担保するために厳格な参加要件が設けられているからです。審査には数週間程度の時間がかかることがあり、ファクタリングのように自社の信用力が低くても利用できるサービスとは異なります。

登録に必要な要件 詳細
相手の環境 取引先もでんさいネットに加盟していること
審査対象 自社の財務状況や経営の安定性
必要期間 申し込みから数週間〜1ヶ月程度

万一の貸倒れリスク(償還請求権)は手形と同じ

「でんさい割引」を利用して期日前に現金化した場合に注意すべきリスクがあります。
万が一、お金を払うはずだった取引先が倒産した場合、自社が銀行にお金を返さなければなりません。
これを「償還請求権(しょうかんせいきゅうけん)」と呼びます。
電子化されても、取引先が倒産した時の貸倒れリスクは紙の手形と同じように残ります。

でんさい割引を利用しても貸倒れリスクは自社が負うことになり、原則として償還請求権が設定されている取引だからです。資金繰り計画を立てる際は取引先の経営状況も注視する必要があり、後述するノンリコースのファクタリングを利用した場合はこの義務を負いません。

資金化の方法 取引先倒産時の自社の返済義務 リスクの負担者
紙の手形割引 あり(買戻し義務) 自社
でんさい割引 あり(償還請求権) 自社
ファクタリング 原則なし(ノンリコース) ファクタリング会社

なぜ普及が遅い?2026年問題に向けた社会的背景

「そんなに良いものなら、なぜもっと広まっていないのか」と感じるかもしれません。
実は、中小企業におけるIT化の遅れや、双方登録のハードルが壁となり、普及は緩やかでした。
しかし、2026年度末には全国の銀行で紙の手形・小切手の交換が実質的に廃止されます。
国を挙げたデジタル化の波により、今後は一気にでんさいへの移行が進むと予想されています。

これまではIT化の壁がありましたが今後は一気に普及が進むと見込まれ、2026年度末の手形交換廃止というタイムリミットが迫っているためです。期限直前は金融機関の窓口が混み合う可能性があり、一部の特殊な取引では引き続き別の決済手段が残る場合もあります。

普及を取り巻くタイムライン 状況の変化
導入初期(2013年〜) ITリテラシーの壁などで普及が緩やか
現在 取引先からの切り替え要請が急増中
2026年度末 紙の手形・小切手の交換が実質廃止

資金調達の比較:でんさい割引とファクタリングの違い

手元の資金を増やすための手段として、「でんさい割引」と「ファクタリング」がよく比較されます。
どちらも期日前に現金化できる仕組みですが、中身は全くの別物です。
コストを取るか、リスク回避を取るか、自社に合った選択をするために違いを見ていきましょう。

両者はリスクの負担者と手数料の仕組みが大きく異なり、融資に近い割引と債権の売買であるファクタリングという性質の違いからです。目先の手数料だけでなく万が一の倒産リスクまで考慮して選ぶ必要があり、自社の決算内容が赤字かどうかで利用できる手段が変わってきます。

比較ポイント でんさい割引 ファクタリング
リスク負担 自社が負う 業者が負う
コスト(手数料) 比較的安い 比較的高め
審査の厳しさ 厳しい(自社を見る) 柔軟(相手を見る)

貸倒れ時の返済義務(償還請求権)の有無

資金調達において最も重要な違いが、先ほども触れた「償還請求権」の有無です。
でんさい割引は、万が一売掛先が倒産した場合、自社が銀行にお金を返す義務があります。
一方、ファクタリングは債権を完全に売却するため、売掛先が倒産しても自社に返済義務はありません。
これをノンリコース(償還請求権なし)と呼び、リスク回避に非常に優れています。

ファクタリングなら売掛先の倒産リスクを完全に切り離せ、ファクタリング会社がリスクを織り込んで債権を買い取るためです。悪徳なファクタリング業者の中には償還請求権をつけてくる所もあるので契約書の確認が必須で、保証型ファクタリングなど特殊な契約形態の場合は条件が異なります。

万一の倒産時 償還請求権 自社の対応
でんさい割引 あり 銀行へお金を返す(買戻し)
ファクタリング なし 何も支払う必要はない

利用にかかる手数料とコストの違い

コスト面では、でんさい割引に軍配が上がります。
でんさい割引は銀行が行うため、通常の融資に近い比較的低い金利(割引料)で利用できます。
一方のファクタリングは、業者が貸倒れリスクを丸抱えするため、どうしても手数料が高めに設定されます。
一般的に数%から、場合によっては10%以上の手数料が引かれることもあります。

手数料をできるだけ安く抑えたいならでんさい割引が有利で、銀行が提供するサービスでありリスクを自社が負う分コストが下がるからです。ファクタリングの手数料が高すぎると利益が吹き飛んでしまう恐れがあり、3社間ファクタリング(取引先を巻き込む方式)の場合は手数料がかなり安くなる傾向があります。

資金調達手段 手数料の相場 コスト負担
でんさい割引 年利数%程度 軽い
ファクタリング(2社間) 約8%〜18% 重い
ファクタリング(3社間) 約2%〜9% 中程度

審査基準と利用のしやすさ

いざ資金が必要になった時の「利用のしやすさ」も異なります。
でんさい割引は銀行の審査となるため、自社の業績が赤字だったり税金を滞納していたりすると利用できません。
ファクタリングの審査で重視されるのは、「売掛先(取引先)が確実にお金を払ってくれるか」です。
そのため、自社の経営が苦しい状況でも、取引先が大手企業であれば審査に通る確率が高くなります。

自社の業績に不安がある場合はファクタリングの方が利用しやすく、ファクタリングは「自社」ではなく「取引先の信用力」を審査の軸にするためです。個人事業主に対する売掛金などはファクタリングの審査に通りにくい傾向があり、でんさい割引でも長年の取引実績がある銀行であれば柔軟に対応してくれる事もあります。

資金調達手段 審査で重視される対象 自社の状態が赤字の場合
でんさい割引 自社の信用力 審査に落ちる可能性が高い
ファクタリング 取引先の信用力 利用できる可能性が十分にある

自社に最適な手段は?状況別の選び方と取引先への交渉術

結局のところ、自社はどう対応するのが正解なのでしょうか。
資金繰りの状況や、取引先との力関係によって最適な選択肢は変わってきます。
ここでは状況別の選び方と、もし断りたい場面での上手な伝え方をご紹介します。

自社の優先順位(コストか、リスク回避か)を明確にして手段を選ぶことが重要で、どのサービスも一長一短があり万能な解決策は存在しないからです。取引先との関係性を壊さないよう慎重なコミュニケーションが求められ、大口の継続取引か単発の取引かによっても最適な手段は変わります。

重視するポイント おすすめの選択肢
コストを最小限に抑えたい でんさい割引
倒産リスクを確実に回避したい ファクタリング
資金調達の確実性を優先したい ファクタリング

「でんさい割引」と「ファクタリング」どちらを選ぶべき?

判断基準は非常にシンプルです。
手数料を1円でも安く抑えたい、かつ自社の経営状態が良好で審査に自信があるなら「でんさい割引」を選びましょう。
逆に、多少手数料を払ってでも貸倒れリスクをゼロにしたい、あるいはとにかく早く現金が必要な場合は「ファクタリング」が適しています。
自社のキャッシュフロー表を確認しながら決断することが大切です。

状況に応じて低コストな割引か安全・迅速なファクタリングかを使い分けることが基本で、企業の成長フェーズや資金のひっ迫度合いは常に変化するからです。ファクタリングに依存しすぎると慢性的な資金不足に陥る危険があり、十分な現預金があり期日前の資金化が全く不要な企業はどちらも選ぶ必要はありません。

自社の状況 最適な手段 選ぶ理由
資金に余裕があり手数料を抑えたい でんさい割引 銀行金利に近い低コストで利用できるため
取引先の経営に少し不安がある ファクタリング 償還請求権なしで貸倒れリスクを回避できるため
銀行の融資枠がいっぱいで借りられない ファクタリング 借入金ではなく債権の売却として処理できるため

両者のいいとこ取り?「でんさいファクタリング」という選択肢

近年、新しい選択肢として「でんさいファクタリング」というサービスも登場しています。
これは、でんさいのシステムを使ってファクタリングを行う仕組みです。
電子化された便利な手続きはそのままに、万が一の倒産時には返済義務がない(ノンリコース)という強みがあります。
大口の取引先がこの制度を導入しているなら、積極的に検討する価値があります。

手続きのラクさとリスク回避を両立できる新しい手法で、銀行系ファクタリング会社がでんさいの仕組みを利用して提供しているためです。支払企業(取引先)が主導して導入するケースが多く自社単独では始めにくい側面があり、取引先が制度を導入していない場合は利用できません。

サービスの特徴 内容のイメージ
事務手続きの簡便さ でんさいと同じくオンラインで完結(ラク)
リスクの少なさ ファクタリングと同じく償還請求権なし(安全)
導入の主導権 主に支払企業側がスキームを用意する

取引先からのでんさい打診を断る場合の適切な理由と伝え方

取引先からでんさい導入を打診されても、自社にメリットがない、あるいは対応できない場合は断る勇気も必要です。
「よくわからないから」と感情的に断ると角が立ちます。
「メインバンクの審査に通らなかった」「社内の会計システム改修に数百万円かかるため、今期は捻出できない」など、客観的な理由を伝えましょう。
下請法に守られている立場であれば、一方的な支払い条件の変更は強要できない決まりになっています。

客観的でやむを得ない理由を添えて誠実に断ることが重要で、相手も業務効率化のために提案しており関係悪化を防ぐためです。嘘の理由を伝えると後で辻褄が合わなくなるため事実に基づいた理由を選び、元請け・下請けの関係性が明確な場合は不当な不利益変更は法律で禁じられています。

相手を納得させやすい断り方の理由例 伝え方のニュアンス
審査落ち 「誠に申し上げにくいのですが、金融機関の基準を満たせず…」
システム未対応 「現在の会計ソフトが非対応で、改修予算の確保が難しく…」
社内リソース不足 「経理担当が1名しかおらず、新しい業務フローの構築が現状困難で…」

でんさいを始める場合の具体的な手続きと流れ

「よし、自社でもでんさいを導入してみよう」と決めた場合、どのような手順を踏むのでしょうか。
複雑に見えますが、大まかな流れさえ掴んでしまえば難しくありません。
実務担当者が知っておくべき、利用開始から口座にお金が入るまでのステップを解説します。

窓口での申し込みから始まりWeb上での操作を経て入金に至り、金融機関を窓口としてでんさいネットのシステムを利用する構造だからです。申し込みから実際の利用開始までには時間がかかり、金融機関によってはネット銀行などで一部取り扱いがない場合があります。

大まかなステップ 概要
STEP1:申し込みと審査 銀行へ利用申請し、審査を受ける
STEP2:実際の取引と決済 システム上で発生記録を行い、期日に入金される

STEP1:取引金融機関への利用申し込みと審査

まずは、普段お付き合いのある銀行や信用金庫の窓口に連絡し、でんさいネットの利用申し込みを行います。
法人印鑑証明書や決算書など、通常の融資に近い書類の提出が求められます。
銀行での審査が行われ、無事に通過すればインターネットバンキング等にでんさいのメニューが追加されます。
書類の準備などに手間取ることもあるので、期間には余裕を持って進める必要があります。

普段使っている金融機関を経由して利用手続きを進めることになり、でんさいネットに直接申し込むのではなく金融機関が窓口となる仕組みだからです。金融機関ごとに所定のシステム利用料や月額基本料が設定されており、決算書を提出していない新規設立企業などは追加の書類が必要になることがあります。

申し込み時によく求められるもの 用途
履歴事項全部証明書(登記簿) 会社の存在確認
印鑑証明書 代表者印の確認
直近の決算書 財務状況・審査用
法人番号 システム登録用

STEP2:発生記録請求から期日の自動決済(口座入金)まで

審査を通過し、取引先も準備ができたら実際の取引スタートです。
支払企業がパソコンから「いつ、いくら支払う」という情報(発生記録)を入力して送信します。
納入企業側は、その記録を画面上で確認するだけで完了です。
あとは支払期日を待つだけで、自動的に口座へ資金が送金され、決済が完了します。

取引のスタート(発生)からゴール(決済)まですべてオンラインで完結し、システムが期日を自動で判定し資金移動を行ってくれるからです。資金が必要な場合は期日が来る前にシステム上で「譲渡」や「割引」の操作を行い、支払企業の口座に資金が不足している場合は決済エラーとなり入金されません。

取引の流れ(時系列) アクションする人 実施する内容
1. 発生記録の請求 支払企業 支払いデータをシステムに入力・送信
2. 内容の確認通知 納入企業 自社の画面で債権が発生したことを確認
3. (必要に応じて)譲渡・割引 納入企業 資金繰りに応じてシステム上で操作
4. 期日決済(自動送金) システム 支払口座から納入口座へ資金を移動

電子化の波を乗りこなし、より効率的で安全な経理業務を実現するための参考にしてみてください。

この記事を書いた人

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中屋 弥

職業:WEBコンサルティング会社代表兼最高財務責任者

トヨタ東京カローラ株式会社、株式会社GMOインターネット、その他ITベンチャーにおいて取締役兼財務管理担当などを経て、WEBコンサルティング会社を経営。
現在は経営の傍ら、金融系コラムを寄稿する事を主として活動。

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